【土・地】
森や林を散策すると、アスファルトの道路からでは得られない、何とも言えない柔らかなクッション感覚が伝わってくる。掘り起こしてみると、幾重にも堆積した腐葉の間からミミズやら芋虫の類が現れる。腐葉ではあるけれど、鼻をつまむ嫌な匂いはない。土は空気や水と同様に、あって当たり前のような存在だが、実は累々たる〈命の積み重ね〉だということが実感される。〃土に還る“なんて言葉が魁ってくる。私たちは土から穫れる植物や、植物を摂取し生育した動物によって命を繋いでいるが、その根源にあるのは「土」である。【土・地(つち)】日本語は漢字輸入を境にして、アナログとしての読み(話し言葉)とデジタルとしての文字(漢字=書き言葉)が融合し、漢字輸入以前からの〈つち〉は「士」となり、地、土地という、それまでにはなかった新たな言葉が誕生した。言うまでもなく漢字の「士」は、大地から生命が誕生する姿を象形した文字で、私たちは何の疑いもなく〈つち〉と読む。『天地の詞」と言えば、空海作と伝えられる『いろは歌』以前にあった仮名四十八文字を重複しないように綴ったものである。くあめつちのことば〉と読む。「地」と書いて〈つち〉である。原日本語では「土」も「地」も〈つち〉なのだ。漢字の世界だとヤ話は別で、地は土と也からなり、也(古音はチ)が音を表し、うねうねと続く意の語源「施」からきている、と漢和辞典にはある。